[不当解雇]実体験から見た裁判と労働審判の違い

ハロー、おかえり同志。

これは僕が会社と闘った記録ですよ。

僕は未経験から札幌のとあるIT企業に第二新卒で入社し、6か月の試用期間で解雇通告を受けました。

当然すんなり受け入れられるものではないので、労働審判を起こして会社と闘いました。

このブログ内では会社と闘った体験を可能な限りオープンにして詳細に書いています。

すべての内容、もくじはこちらから参照できます。

この記事では「労働審判とはなんぞや?」というのをお伝えしたいと思います。

  1. 労働問題を抱えてしまった場合
  2. 裁判での解決が難しい理由
  3. 労働審判をオススメする理由

労働問題を抱えてしまった場合

例年、長時間労働やパワハラで追い込んでくる社員を使い捨ての道具としか思っていない「ブラック企業」が話題になり続けています。

僕のゲーセン仲間でもブラック企業に入ってしまった方がおりまして、ツイートを見ると

ホントに大丈夫か…?と心配になってしまいます。

・給料、残業代、退職金が正しく支払われていない
・解雇された、退職を強要or勧告された
・セクハラ、パワハラで悩んでいる

こういったことがあった場合、自分一人での解決は非常に難しいと思いますので、解決に向けて動く場合は訴訟など司法の力に頼ることとなります。

訴訟と聞いて真っ先に裁判を思い浮かべるかと思いますが、裁判での解決はなかなか難しいのです。

裁判での解決が難しい理由

裁判となると会社と闘うことになります。

訴訟を起こすような人間というのは会社から見れば反逆者です。

仮に和解したとしてもそんな社員をまともな形で在籍させる会社はそうそうないでしょう。

なので、解雇以外の問題であっても結局会社から出て行くことが前提になります。

そんな状況で裁判を起こすと…

・裁判だけで解決まで年単位でかかる可能性がある
・訴訟中働くと不利になる
・裁判している間も生活費は当然かかる

このような問題があります。順に見ていきましょう

裁判になると長期間の争いになる

以下の画像とPDFは2019年度における実際に裁判でかかった時間の統計です。

令和元年度 第一審通常訴訟既済事件数―事件の種類及び審理期間別 ―全地方裁判所

労働問題における裁判は全部で2,571件で、うち1年以上かかった件数は2,096件と、1年経過するケースでも80%以上もあります。

5年を超えているケースも複数あり、年単位で会社とやりあうのは珍しくもなんともないどころか当たり前の世界なのです。

例えば解雇されたとかで収入がなくなった場合、アルバイトで食いつなぎながら裁判を進めよう…というわけにはいかなかったりします。

訴訟中に働くと状況が不利になる

解雇無効を訴える場合、名目は「自分の地位確認(判決の時点で、会社に在籍していることの証明)」です。

つまり、勝訴=元の会社に戻るということが前提になります。

…とはいえ、一度敵に回した会社に戻ったところで白い目で見られることは間違いないんですがね。

でも、別の会社に再就職してしまうと「元の会社に戻る気はないのではないか」と裁判で突っ込まれて不利になる可能性があります。

もし転職している状態で和解で終わらず地位確認が認められた(勝訴した)場合は、今在籍している会社を辞めて、前の会社に戻ることにもなるのです。

雇用保険もいまひとつ頼れない

働けないとなると生活費をあらかじめ用意しておく必要があります。

こういうときに雇用保険(失業給付)が頼れれば良いのですが、早々に決着しないと途中で受給期間が終了します

雇用保険の受給期間は雇用期間により変わりますが、90~240日です。

短期間しか勤めていない場合は3ヶ月しかもらえないので、解決までの生活費を賄うことはできず、弁護士費用で消えてしまいます。

こういった面から見ると「長引いて雇用保険が受けられなくなったら…会社に戻らなくてはいけなくなったら…」

そう考えると裁判にはなかなか踏み切れません。

ですが大丈夫です!

この問題のほとんどを解決する労働審判という制度があります!

労働審判をオススメする理由

労働審判は個人と会社の争いを解決するために設けられた制度です。

労働者と会社の双方が裁判所に送った資料をもとに労働審判委員会の3人から双方に質問し、判断を下します。

裁判所のWebページの図がイメージしやすいと思われます。

裁判所|労働審判手続

最近では裁判所が労働審判について説明した動画をYoutubeに載せていたりします。

労働審判委員会は

・裁判官
・労働組合の役員など、労働者側の労働紛争経験者
・企業の人事、社長など企業側での労働紛争経験者

の3人で構成されます。

裁判員裁判のような素人ではなく、最高裁判所からお墨付きを得たすごい方々です。

裁判と同じで裁判官が判決を下しますが裁判との違いとしては以下の3つ。

  1. 早く決着がつく
  2. 判決ではなく調停(和解)案が提示される
  3. 弁護士費用が安い

早く決着がつく

裁判所が出したデータによれば、2006年から2019年までの平均審理期間は77.2日であり,70.5%の事件が申立てから3か月以内に終了しています。

1つの事件で行う労働審判の回数は3回目までと定められており、2回3回ともつれ込むケースが多いのですが、実際は1回目でおおよそ決着がついていることが多いです。

というのも、1回目で裁判官が出した見解はなかなか覆りません。

一度出した内容を撤回することになるので、覆すには相当の理由が必要です。

1回目で裁判官が見解と調停案を出して、結果に不満な側が「まだ考慮してもらいたい内容がある」と次に持ち込むかのどちらかになります。

ただし解雇されてから3ヶ月で決着がつくわけではなく、実際には労働審判を裁判所に申し立てる前に和解交渉があります。

上記のデータは申立から終局までの審理期間なので、申立前の交渉を含めると実際には半年近くかかります。

判決ではなく調停(和解)案が提示される

「調停」は双方の言い分を聞いた上で、

「給料○ヶ月分の和解金で手打ちにしませんか?」

と裁判長が提案し、それに同意すれば調停成立(労働審判の終了)となります。

労働審判委員会には裁判官以外にも、先に述べた2名の労働問題のスペシャリストがいます。

復職での決着が双方にとって望ましくないことはわかっていますので、会社に復職させろという審判を下すことはほぼないです。

調停についての記載内容はこんな感じ。僕が労働審判を起こし和解で終わった時の実際の資料です。

どちらかが調停案に応じず3回目を終えた場合は、

「○○に対し、会社は××日までに△△円を支払わなくてはならない」

などといった形で審判が下ります。

無視しようもんなら罰金が科せらるので、不服ならば期間内に労働審判から本裁判に持って行くしかありません。

会社が裁判して勝ったところで得るものがないので大赤字です。まともな会社なら裁判はやらないと考えてもいいでしょう。

弁護士費用、印紙代が安い

弁護士費用は裁判なら35~50万円が目安です。これに対して労働審判は15~25万円です。

僕の場合は弁護士費用と裁判所への手数料をコミにした合計で25万円(消費税や振込手数料を除く)でした。

工面できない場合は最寄りの法テラスに相談に行けば世帯収入が一定以下の場合、費用を立て替えてくれます。

法テラス|法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ

弁護士費用だけでなく生活費用にも不安がある場合も、雇用保険を貰うことで係争中の負担がかなり減ります。

就職活動しなくても雇用保険がもらえる

これは裁判も同じですが、労働審判を起こすと働かなくても雇用保険がもらえます。

雇用保険の受給には「2回以上の就職活動実績が必要」といった条件が定められていますが、労働審判を起こした場合はこのような受給に必要な要件が免除されます。

受給の時、ハローワークに離職票と一緒に弁護士との契約書を持って行き理由を説明すると「係争中」というスタンプを押された雇用保険受給資格者証が貰えます。

これを持って行けば就職活動できない特殊な事情ということで、毎月ハローワークに行くだけで雇用保険を受給できます。

裁判と労働審判についてのまとめ

労働審判を使うことで、通常の裁判にあった

・時間がかかりすぎる
・勝ったら会社に戻らなければならない
・訴訟にかかる費用が高い

という3点がクリアされます。

解雇や賃金未払いなどがあったら、会社への怒りの感情が強いうちに早々に弁護士に依頼しましょう。

時間が経つと「これ以上関わりたくない」と戦う気持ちが薄れていきますが、怒りの感情があるうちは復讐心からものすごい行動力が生まれます。

余談ですが、労働審判を起こすと会社へ大きなダメージが与えられるという、復讐心を満たすことのできる特典があります。

会社側は弁護士を必ずつけなくてはならないので、顧問弁護士がいない中小企業の場合は必死になって弁護士を探す必要があります。

言い方は悪いですが、この時に弁護士は足下を見ることができるで値段が高めになる傾向があります。

僕についた弁護士さん曰く「私なら最低でも50万はとりますね」とのことで、さらに和解金の支払いなどを含めると、かなりの痛手になることが予想されます。

こういった点から会社との争いが発生した場合、時間と費用が大きい裁判よりも「労働審判」という非常に便利な制度の活用がおすすめです。