交通誘導の警備員は超理不尽な職業ということを経験者がもうちょっと語ってみた

虫が多い季節なので夏は嫌いです。『なー』です。

前回、警備員という仕事の内容について記事を書きました。

交通誘導の警備員は超理不尽な職業ということを経験者が語ってみた

この記事のPV数を図ったところ、いつもより妙に伸びていたので警備員という仕事について、実体験をもうちょっと書いてみます。

そういえば、夏って路上警備員にとっては地獄の季節ですね。暑いのはもちろん、ヘルメットで隠れているところ以外中途半端に日焼けしますしね。

警備員に権限は一切ない

警備員の制服は基本的に青色で、警察官の制服とよく似ています。見分け方としては警備員は警察官と違って「旭日章」が制服についてません。「旭日章」ってこれね。

これの代わりに社名や社章が制服に縫い付けられています。

ロゴにお金かけないところは、ワシとか羽を広げた鳥のロゴが使われているところが多い…気がします。キャプテン・ファルコンのヘルメットについてるようなやつ。

交通誘導の警備員は工事現場周辺を警護していますが、事故発生時などは警察官も交通誘導を行う場合があります。

もし、警察官が行っている交通誘導の指示に従わない場合、『警察官現場指示違反』として、罰金や免許証の点数が引かれます。

警備員も交通誘導する上で、このような法規制により車両を従えて誘導できるとよいのですが…

警備員には車両を従わせる権限は一切ありません

基本「ご通行中のミナサマ、どうかご協力ください!」というスタンスになります。

んなもんで、警備員が止まれと指示したにも関わらず「知らねーよ!」と無視して進んでもお咎めなかったりします。

主に無視するのはタクシーやトラックの運ちゃんです。体を張って止めようとしてもスピードを緩めず突っ込んでくるのでマジで殺しに来てます。

僕はこれでタクシーが嫌いになりました。

警備員には何の権限もないことは研修時に必ず教えられるし、無駄に知識ある一般ピーポーも知ってる人は知ってたりします。

嘘みたいなマジな話、警備員が「止まれ」と書かれた旗を提示したところ、

「権限を持たない警備員ふぜいが『止まれ』とはなんだ!なんで偉そうに命令してるんだ!」

と文句つけてきた爺さんがいたりします。

こんなのスルーしとけよと思ったもんですが、会社としては無視できなかったようで、旗を使って停止指示を出す時はこういう旗を使うようになりました。

警察官は「止まれ」と書かれた三角の旗を使います。ネズミ捕りとかやるときに持ってますね。


警備員として最も辛かった仕事

忘れもしない2014年9月12日、江別での出来事です。

この日の業務は警備員としての理不尽が詰め込まれていました。

3日前から北海道では記録的な大雨が続いており、11日には北海道では初めてとなる大雨特別警報発表がありました。

この影響により大幅に増した千歳川の水を浄水場が処理しきれなくなり、10日から14日まで、江別では大規模な断水が発生しました。

この時の経過については江別市の元議員さんのブログが詳しいです。

江別の断水災害

僕がいた警備会社では、全員が電話工事の警備を行います。電話工事ではバケット車を使って高所での作業を行いますから落雷による危険も当然あります。

それゆえ、この日は本来勤務開始となる朝7時の段階でほぼ全ての現場で工事中止が決定しました。

雷が落ちるってこんな感じなんですからね。命の危険もありますから工事を中止するという判断は当然でしょう。

…残念ながら、僕がついた作業員は「休んだら金にならない」と悪天候にもかかわらず工事する旨を伝えてきました。工事中止で休みになると思っていた僕はテンションだだ下がりです。

結局、昼頃には晴れたので比較的楽でしたが、大雨により開始が遅れたので、定時を過ぎて17時頃にひとまず業務終了。

…とおもいきや、作業員に連絡が入り緊急事態が発生したとのお達しが来ました。

江別市内で火災が発生!

住宅の近くにあった電話線や電線が焼けたためすぐに復旧に迎えとのこと。通信もライフラインですからね。一刻も早い復旧が必要となります。

現場に向かうと、全焼した住宅そばで電線のメンテナンスが始まっています。住宅は鎮火しているものの真っ黒に焼けており、焦げ臭いです。

すでに行われている電気工事に加わることで、周囲は電話工事と電気工事の車両でゴチャゴチャし始めます。電気工事の警備員と連携をとり誘導開始。

現場は住宅街ですが、広い通りに面しており交通量もけっこう多いです。近くには災害など非常事態があった時に集まれる市民体育館もあります。

ちょうど今は断水という非常事態が発生中

通りは広いので、ここをめがけて自衛隊や道内各市町村の給水車や押し寄せてきます。

給水車って大型ですからね。自衛隊のやつなんてこんな感じですよ。

これが道路脇に複数台、その反対車線は電気と電話線工事の車両が止まり、広かったこの道路は一気に狭くなります。

給水車には「余市町」や「旭川市」などと書いてあり、本当に道内のあらゆる市町村の給水車が集結していました。旭川なんて120kmは離れてますからね。

この光景に、江別市民は「これで復旧するまで水に困ることはない!」と心強く見えたと思います。

…でも道路端に待機する各市町村の給水車が増えていくにつれて「一体何台の車が来るんだ…」と、交通誘導している僕はただ気が重かったです。

時間も18時を回り、帰宅する車と水を取りに来る江別市民の車が押し寄せてきます。

加えて夕食を作れないから出前を取る家庭もあったのでしょう。銀のさらとかピザハットとか宅配の車もたくさん走ってきます。

もうとにかく必死で誘導!

現場に着いてから4時間、再び雨が降り出し、時刻は22時をまわりましたが水を求める人は止みません。朝から動かしていたトランシーバーも電池が切れました。

そんな状況でも必死で誘導していると、作業中の作業員から電話がかかってきました。

僕はこういうヘッドセットを装着してたので、いつでも電話に出られます。

このクソ忙しいときに、一体何事かと思って誘導しながら電話に出ると

「タバコ切れたから手止めて買ってこい!」

状況考えてもの言えよ

……っっっっっってか、

タバコ吸いながら仕事するなよ

雨の中、作業しながら火を消さずどうやってそんな器用に喫煙できるんだよ…当時はgloとかIQOSとかないですからね。

いつもであれば住宅街で車通りも少ないですから(だからって私用の買い出しさせるのもクソでしかないのですが)買いに行けますよ。

でも今は工事車両と給水車で道が狭くなり、それでいて交通量も多い状況で離れる事はできませんから、お断りです。

結局工事は翌日の深夜2時まで続きました。翌日は別の現場で8時から警備の仕事…睡眠時間は投げ捨てるもの。

この日は7時から翌日の2時まで仕事だったので、昼休みを除けば18時間勤務でした。

応援に来た別の作業員と工事が交代した1回だけ10分の休憩をもらえましたが、それ以外は立ちっぱなし。

水が使えないからトイレも使えないので、江別にいた夜の間、便意を抑えるため飲まず食わずで現場に戻ってました。

…で、後日…

「タバコ買ってこい!」という指示を聞かなかったことが原因で、命令無視とのことで、

この作業員のいる会社に出入り禁止となりました

なんと理不尽!でもこのクソ作業員から離れることができたので結果オーライ。

しかし人手不足により出入り禁止を解除せざるを得なくなったようで、辞めるまで2回ほどクソ作業員に再び付くことになったのですが、僕は無視されつづけました。

「タバコ買いに行け」という合図代わりに無言で頭を殴られたりもします。これでも会社は「かわいがられてるだけ」と何もしてくれなかったので、12月で退職しました。

警備員というのは超理不尽な仕事なんです。

頑張りが評価されることもなければ、立場も弱く、通行人・作業員から煙たがられ、それでいて命の危険もある。そのくせ給料が安い。

優しい人も中にはいますが、ガラの悪い作業員の比率、そして作業員からのパワハラを解決しない警備会社…慢性的に人手不足な理由がわかっていただければ幸いでございます。