派遣会社相手にADR(あっせん)をやった時の内容をまとめました

暑くなってきたぜ。『なー』です。

僕は派遣会社で紹介された会社から「タバコ臭いと上司に指摘した」ことにより雇止めされました。雇止めって要するにクビね。

2つ前からこの経緯をまとめています。1つ前では今回使用することとなった制度『ADR法(あっせん)』の概要を実体験をもとに説明していきました。

会社との争いに使えるADR法(あっせん)とは?実体験をもとにまとめました

では、実際にどのような流れで進んでいったか、実体験を書いてみます。

あっせん開始日になりました

ADR法の申立から1ヶ月ぐらい経ち、あっせん実施日になりました。

僕は紺色のジャケットと同じ色のジーンズに白いオックスフォードシャツというカジュアルな服装で臨みました。オールユニクロ。服装は私服で問題なさそうです。

日の当たらぬ薄暗いビルの中、すぐに職員さんが出迎えてくれました。外が暑かったので薄暗い廊下が涼しくて心地よい。

 

職員「本日はよろしくお願いいたします。斡旋委員会がそろっておりまして、今から始めようと思いますがよろしいでしょうか?」

僕「よろしくお願いします。派遣会社の人は来てるんですか?」

職員「あ、いえ、個別に聞き取る形になりますから後から来る予定です」

と、労働審判のように相手方と同席するようなことはなし。個別に聞き取るため、最後まで一度も相手と顔を合わせることはありませんでした。

裁判所と違って、録音が禁止というルールを伝えられなかったので、念のためボイスレコーダーを忍ばせておきます。

到着からまもなく、あっせん委員会が待機している会議室に入ります。

職員「一通りお話を聞いた後、控え室に戻っていただき、会社の話を聞き取ったあとにもう一度話を聞く…といった形で控え室と行ったり来たりする形になります」

入ると既に2人のあっせん委員が待機していました。

50代であろう弁護士(以下弁護士A)が真ん中の席に、その隣にはさらに年上のおじいちゃん弁護士(以下弁護士B)。後ろから社労士事務所の所長が見ており、もう1人職員が記録係として会議室に居ました。

会議室は上面図にすると、

こんな感じで、委員会の2名と向き合う形であっせんを進めるという形でした。

これはまるで…就職の面接…

さて、軽くおさらい。このADR法(あっせん)には「判決」などはありません。

この場に居る委員会の人たちは間に入って伝えるだけの役割しかないです。味方になるわけでも裁判官みたいに「お前が悪い!」と判決を下すこともありません。

早い話がこの人達の役割は、

話を聞いて、相手に伝えてくれるだけ

このことを念頭においておきましょう。

状況の聞き取りが始まりました

弁護士A「請求内容は地位確認(職場復帰)もしくは和解金の支払いでよろしいでしょうか?」

僕「はい。問題ありません。」

こんな感じで申し立てる内容を確認します。契約内容についても

「更新については意思確認などありましたか?」
「雇用条件の変更については変わりなかったでしょうか?」
「働いて居たのは月あたり何日でしょうか?」

といった質問が飛んできます。これは、支払われた給与がどのくらいだったかを確認するためのもの。提示する和解金の目安になります。

あとは雇止め理由とされる内容についての事実確認。

弁護士B「『タバコ臭いと上司に指摘した』とありますが…まぁ迷惑だよね。これは事実ですか?」

弁護士B「『顔が怖い』といった指摘に対して改善…するような内容じゃないなこれ…でも指摘はいつ頃ありましたか?」

といった質問に答えました。おじいちゃん弁護士Bさんはけっこう気さくでした。

この間、終始緊張しっぱなし。声もボソボソとしており、うわずっていたように思います。

40分ほど聞き取りが終わると、

弁護士A「解決方法としてどのような方法を望みますか?」

僕「元の職場への復帰による解決を望んでいました…ですが、既に会社との信頼関係はないようなものですから、給与3ヶ月分の和解金での解決を希望します」

弁護士A「わかりました。大体50万円ほどですね。それでは会社からも詳しく話を聞きます」

退室し、控え室へ移動します。

…が、控え室は社労士会の会長室!ご立派な机が鎮座しており、何書いているのかわからない書道の作品が飾ってあります。

歴代会長の写真が壁に飾ってあり、書棚には「社労士会のあゆみ」といった冊子が並んでました。会長室というよりかは校長室。

そんな重い空気な会長室という名の控え室でぼっち待機。待ち時間長すぎて暇すぎるのでkindleでホリエモンの本読んでました。この頃には緊張もとけてます。

1時間30分ほどするとドアがノックされ、

職員「会社からの聞き取りが終わりました。入室してください」

と呼ばれ、先ほどの会議室に向かいます。



和解金の駆け引きが始まりました

会社も同様に和解金について聞かれていると思います。なので、会社がいくら出してくるのかドキドキしています。

大企業だし、さっさと終わらせるために折れてポンと出してくるかと思いきや、そんなことは当然なく…

弁護士A「会社側の言っていることと、いくつか食い違いが見られましたね…和解金ですが、会社からは1万円であれば受けてもよいと回答がありました」

……

………は?

…1万円!?

馬鹿にしてんのか!!

 

僕が提示した額の約50分の1です。お年玉じゃねーんだぞ。

会社の人間に面と向かって言われたら怒鳴ってたかもしれませんが、目の前に居るのは委員会の人たち。

冷静に…しかし、もんんんんんのすごく呆れ、ため息をつきつつ

僕「…さすがに少なすぎて無理ですね…」

弁護士A「では、いくらまで譲歩できますか?」

ここで30秒ほど悩みました。できることならさっさと終わらせたい。だが、相手には可能な限り最大限のダメージを与えたい。

もし交渉が決裂して、労働審判になったらブログでネタにしてやってもいい。短期間で2回も経験するなんて日本初の事例でしょうしね。

そんなことを考え抜いた末、

僕「わかりました。では40万円まで下げましょう」

弁護士A「その額では相手は受け入れてくれないと思うけど…本当によいですか?交渉が決裂して、労働審判になったら弁護士費用とか時間もかかりますよ?」

委員会にも交渉が決裂したらペナルティとかあるんだろうか?とか考える余裕が出てきました。

僕「それは理解しています。前の会社と労働審判で争ったので、どういう流れになるか、費用がどのくらい発生するかはわかっています」

弁護士B「え!経験あるんですか!?」

弁護士さん2人とも、目を丸くしてます。まぁ、20代にして労働審判もあっせんもやるやつなんざ、日本中探しても僕以外にいない…と思うしなぁ。

僕「一度この金額を伝えてください。まだ相手が少なすぎる額を提示してきた場合は、交渉を打ち切って労働審判を起こすことも考えます」

…と、かなり強気であることを伝えて退室します。

再び控え室に戻り、1時間ほどすると再び呼び出され…

弁護士A「会社から金額の提示がありました。給与1ヶ月分、16万円で和解を受け入れると返答がありました。これ以上は出せないとのことです」

一気に16倍になりました。でもこちらから提示した額の3分の1…

2分ほどその場で考えました。そのうえで

僕「1ヶ月分まで額を上げて提示してきたようですが、この額では到底受け入れることはできません」

まず突っぱねます。そこから考えながら、理由を説明しました。

僕「雇用保険(失業給付)の支給額は給与平均の0.8倍です。弁護士ナシで労働審判を起こして、負けた方がもらえる額が多いんですよ。大体14万円×3ヶ月分だから約42万円」

弁護士Aが慌てて電卓取り出して計算し始めます。てか振り返ってみて、よくこんなスラスラ計算できたなぁと我ながら関心します。

※雇用保険は総支給額から計算されます。会社は社会保険料なども控除した額を提示してきやがりました。

あとは取り繕わないで、自分の考えを伝えました。

僕「とはいえ、僕も早く再就職に向けて動きたいです。最初の提示額より低い額で受け入れてもよいと思っていますが、1ヶ月分は少なすぎます。だから僕が提示する額は……」

ここでビシッと言えたらかっこよかったのですが、20秒ほど止まり、考えた末に恐る恐る金額を切り出します。

僕「30万円、30万円…30万円であれば和解に応じたいと思います。30万円であれば」

なんで4回も言ったんだ僕。テレビショッピングかよ。

弁護士B「さすがに高すぎないかな?多分受け入れてくれないと思いますよ?」

僕「かまいません。会社が受け入れなければ、交渉を打ち切って労働審判を起こしたいと思います」

この時点で腹をくくりました。

弁護士A「わかりました。それでは会社に改めて話を聞いてみたいと思います」

退室し、控え室に戻ります。暇なのでTwitterしてました。

1時間ぐらいして再び呼び出されます。待機時間だけで合計3時間ぐらいはあったと思います。暇すぎて待機時間で本一冊読み切りました。

弁護士A「会社側が30万円を受け入れました。本社と連絡をとっていたようで時間がかかりましたが、和解で問題ないですか?」

なんと労働審判を覚悟していましたが、高すぎると言われた額が通りました。

僕「はい。問題ありません。受け入れたいと思います」

…なんだか『やってやった感』に欠けますが、あっさり争い終了。

弁護士A「それでは書類にサインと印鑑を押して提出をお願いいたします。会社側からも印鑑が押されたら正式に争いは終了となります」

弁護士B「あーでも、会社側は『社長印を社外に持ち出せない』らしいので、後日会社が捺印したうえで書類を発送する形となります。それでいいかな?」

でかい規模の会社って印鑑の取り扱い1つで大ごとになるんだなぁ。

僕「大丈夫です。振り込みは○○銀行の○○支店、口座番号は○○○○○までお願いします」

弁護士A「わかりました。それでは会社側にこのことを伝えて和解の書類を書きます。控え室でお待ちください」

という流れで控え室に戻ります。何回行き来してるんだろう。20分ほど待って書類ができたとのことで捺印して終了。

「和解成立書」と書かれた書類は

・派遣会社から登録解除(二度と仕事紹介しねー!ということ)
・書類の内容について口外禁止
・会社との争いはこれで終わりとする

という内容が盛り込まれており、これに同意することとなります。

同意語は職員の人に外まで見送られて終了。見送りが必要なのは会社側の人間も残っているからだと思います。

こんな流れで決着が付きました。

あ、一応「口外禁止」という条件がついたので念のため

※口外禁止のため、社名など特定に繋がる情報は聞かれても出せません。大体こんなもんと参考にしていただければ幸いです。

お察しいただければと思いますが念のため。

働くうえでトラブルにならないことが一番ですが、トラブル抱えちゃった方が参考にしていただければ幸いです。

……つうか2社連続でこんな争いになるあたり、雇われるの向いてないのではないかと思い始めてます。再就職どうしましょ。