医療ミスと思ったなら剖検(ぼうけん)すればええんでないの?という話

Web上で「Dr.ホッピー」と呼ばれるお医者さんが書いた本を読んでいて、中学時代の同級生のことを思い出したので書いてみました。

中学時代、夏休みの宿題で作文がありました。内容はフリーで、休み中の体験をもとにしたのが多かった…ような気がします。

僕は素行のよろしくない学生だったので、何を書いたか(というか提出したかすら)覚えていませんw

その中で、同じクラスの女の子が

「病気で入院していたわたしの従兄弟は、医療ミスで死んでしまいました。病院は非を認めず、とても悔しかったです。」

という内容の作文を書いており、学校から賞を貰っていました。教育委員会も交え、全校生徒の前で朗読していました。

「病院は『死因確認のため、遺体を解剖したい。今後の医療のために役立てたい』というのです。家族を死なせた病院なんて信用できません。これ以上従兄弟を傷つけさせることはできませんので断りましたが、病院はしつこく食い下がってきました。その姿に怒りを覚えました」

という辛い体験を涙ぐんで話していました。

当時は「まぁ辛かったんでしょうなぁ」と軽く聞いていたのですが、オトナになってDr.ホッピーの本読んだり色々と知識がついた今ならば、

病院でちゃんと調べてから悔しいとか言えや

と思うのです。

白黒はっきりさせる「剖検」

「解剖」というと、逆転裁判などのフィクションでは「司法解剖」が出てきますが、これは犯罪性がある(孤独死含む)可能性があるものに限ります。

僕の同級生の例のように元々病気だったなど、事件性がない場合に行う解剖は「病理解剖」といいます。通称「剖検(ぼうけん)」

これは、亡くなった人を解剖して死因が何だったのか、施した治療は正しいものだったか判断することを言います。

剖検の結果、本当に医療ミスということがわかったならば

・慰謝料が発生する
・厚生労働省からお叱りを受け、病院に支払われる点数(報酬)が減る
・ケースによってはマスコミで取り上げられる

など、経営的にもしっかりと報いを受けさせることができます。

医療ミスを確信して悔しい思いをしているなら、剖検してもらって医療ミスの証拠をつかめばよいだけのハナシ。

剖検は無料!原則として顔にメスは入らず、身体もキレイな状態で返還されるので、デメリットはほとんどない…

…しかし現実では、ほぼ剖検されることはないのです。


剖検が行われない理由

なんで剖検されないかというと、遺族が剖検を拒むから…というシンプルな理由です。

「綺麗な状態で家に連れ帰りたい」「死んだ後も身体が切り刻まれるなんて残酷すぎる」

と思うため…とのこと。

正直僕には理解できません。それなら遺体を焼くのは残酷じゃあないのか?

「死体解剖保存法」という法律があるのですが、こちらの第七条には

死体の解剖をしようとする者は、その遺族の承諾を受けなければならない。

と規定されています(刑事事件の可能性がある場合や、引き取り手がいない限りではこの限りではない)

なぜか2014年までの記録しかなかったのですが、厚生労働省の調査ではなんと剖検率は全国で1.8%です。

csv形式でまとめられていたので見てみると…
(分母は死者数で分子は剖検数)

ワースト5
大分 0.2% 1/546
山梨 0.5% 2/422
愛媛 0.5% 4/767
宮城 0.6% 6/1070
福島 0.6% 7/1079

大分…1人だけなのね…

ベスト5
石川 9.1% 54/594
東京 5.0% 234/4657
鳥取 3.7% 12/321
青森 3.1% 24/778
徳島 2.8% 11/386

でした。石川すげえな!

ちなみに我らが北海道は

北海道 0.9% 33/3700

でした。死者数が東京、大阪に次ぐ3位なんだからもうちょっと頑張って欲しいところ。

剖検を申し込む時の注意点

僕の同級生は結局解剖せず、医療ミスの証拠を遺体ごと火葬させてしまいました。

従兄弟が死んだわけですから、解剖をハナから突っぱねるぐらい感情的になるのはしょうがないかもしれない。

感情的になって言ったことなのかもしれないけど「家族を死なせた病院なんて信用できません」 という内容には一理あると思ってます。

病院にも隠蔽体質があります。もしそのまま病院で剖検して医療ミスの証拠が見つかったとしても、内部だけで処理されてもみ消される可能性があります。

一般企業でもそうだもの。今年もいくつも内部告発の事例がありましたけど、減らないでしょ一向に。

2年前の事件にもかかわらず今も続報が報じられる「大口病院連続点滴中毒死事件」がいい例。

看護師が点滴に消毒液を混ぜて患者2人を殺害したという事件です。

点滴死事件で看護師を逮捕 消毒液混入、殺人容疑で:日本経済新聞 

容疑者は「入院患者20人ぐらいにやった」と言ってますが事件の被害者として扱われたのは2人だけ。

実際に3ヶ月近くの間に同じ階で48人も亡くなっています。発覚以前に明らかにただならぬコトが起きています。

でも発覚していない分以外は事件性のない「自然死」として処理されて、遺体も火葬されているため証拠がない状態です。

病院中毒死事件2カ月で48人死亡も4人以外は自然死扱い、小川泰平氏が解説/ライフ/社会総合/デイリースポーツ online 

こんな感じで実際に医療ミスなどの医療事故があったとしても「自然死」として処理されてしまえば真相は闇に葬られてしまいます。

そこで、別の病院で剖検してもらうのです。主に大学病院で受け付けてくれます。東京や大阪などであれば警察病院があるのでこちらでもOKです。

医者も人間。命に関わるからミスが許されないとはいえ、間違えてしまうこともあります。

でも、ミスをそのままにしては同じ事が繰り返されてしまいます。

剖検の結果は日本病理学会のデータに収載されます。これにより医療の進歩に繋がります。

もしミスが発覚した場合は同じミスがないようなルールが設けられるでしょう。

もし同級生の例のように、医療事故が疑われるようならば最寄りの大学病院に剖検を申し出ることを強くオススメします。