今回も香川県の「ネット・ゲーム規制条例」についてです。
前回はこっち。
もう話題になって2ヶ月近く経ってますねぇ。
で、ついには可決に向けて動き始めました。
【成立の見通し】香川、ゲーム依存防止条例可決へ 1日60分の使用目安https://t.co/aRQCAgCa5b
会合では、県民らを対象にしたパブリックコメントで条例素案への賛成が8割以上を占めたとの結果が報告された。
— ライブドアニュース (@livedoornews) March 12, 2020
具体的に何人中の8割が賛成したのか書いてない時点で、まともに意見聞いてない可能性濃厚ですね。
今回の問題は新聞やSNSで取り上げられてますから、県内だけでもかなりの数の意見が提出されていることは想像に難くないです。
「○○件にも及ぶ多くの意見が提出され、うち○○件は賛成だった」など具体的な数値や、寄せられた意見を出してないわけで、この8割以上賛成って結果はテキトーに言ってるんでしょう。
憲法21条「通信の秘密」に違反してるという事実もしっかりスルーしており、やっぱ香川県議会は憲法というものを知らない人達なんだねってことがよくわかりましたよ…
憲法違反じゃね?って内容についてはこっち参照ね。
この前に音喜多さんがツイートしてましたが、香川県内だけではなく全国規模で条例が効力を持つ可能性があるようです。
香川県の所謂「ネット・ゲーム規制条例」について、政府答弁書が返ってきました。条例の効力について、「当該区域外にある者でも条例の規定となるものを所有・占有する場合、規定が適用されることがありえる」というもので、香川県の問題に留まらないことを確認。
答弁書↓https://t.co/YWUr2ttiAx pic.twitter.com/m6UtDMl0f4
— 音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選出) (@otokita) March 3, 2020
問題点がしっかり注目されればいいのですが、
「ゲーム依存はアルコール・薬物依存症と同じ!だから危ない!」
と、ネット・ゲーム依存症の第一人者という肩書きを持ったお医者さんが言っており、これを鵜呑みにしちゃった議員が規制を進めてるわけですな。
ゲームの依存性に注意。患者の脳に見られる特徴的な反応がアルコール・ギャンブル依存に酷似
しかし実のところ「ゲーム依存はアルコール・薬物依存症に酷似している」いう研究結果は信憑性が乏しいモノだったりします。
「ネット・ゲーム依存」と判定するテストに問題点があるのです
以前の記事にも書いたのですが「ネット・ゲーム依存」と判定するテストが信用性低いという論文が日本国内外から複数出されています。
まずは1つめ。
この討論に参加したのはオックスフォード大学、ミュンスター大学、ストックホルム大学、シドニー大学…など世界最高峰の研究機関に在籍する学者達。
「研究の質が低く、病気として認定するべきではない」という結論なのですが、その大きな理由として挙げられているのがサンプル数不足とテスト方法の欠陥。
っつうのもゲーム障害かどうか判断するテストが、ギャンブルや薬物中毒を判定するテストを流用しているため、集まってるデータの質が低いのです。
では実際に臨床で使われているテストはどんな感じなのか…
例えばここの病院のWebサイト上では、自身がネット依存かどうかチェックするテストが掲載されてます。
ネット依存チェック|ネット依存治療の専門病院 大石クリニック
設問はこんな感じ
・ネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことが度々ありましたか?
・ネットのために大切な人間関係、学校のことや、部活動のことを台無しにしたり、危うくするようなことがありましたか?
・ネットへの熱中のしすぎを隠すために、家族、学校の先生やその他の人たちに嘘をついたことがありますか?
・問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるために、ネットを使いますか?
これが設問内容ですが…さてお気づきでしょうか?
「ネット」の部分を「パチンコ」に置き換えても質問文が成立するのです。
パチンコを完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことが度々ありましたか?
パチンコのために大切な人間関係を台無しにしたり、危うくするようなことがありましたか?
パチンコへの熱中のしすぎを隠すために、家族やその他の人たちに嘘をついたことがありますか?
…と、言い換えても違和感がぜんぜんないのです。
※オスイチ…「お座り一発」の略
買った時は大きく、負けたときは小さく申告するのはパチンカスあるある話ですな。
同じように「飲酒の量を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことが度々ありましたか?」ってアルコールに置き換えても通じるしね。
で、このテストのタイトルは「インターネットゲーム障害(DSM-V)」です。
DSMというのは、アメリカ精神医学会が出版し、世界的に使用されている診断基準「精神障害の診断と統計マニュアル」のこと。
後ろについてるのはローマ数字のV…つまり第5版という意味になります(現在臨床で使われているのは1つ前のDSM-IV)。
実は、DSM-Vではインターネットゲーム障害は証拠不十分と言うことで掲載が見送られております。
つまり臨床において用いるべきではないのです…が、この病院はどういうわけか判断基準に採用してしまってますなぁ…
別のテストに使用しているIATという基準も、ギャンブル・アルコール依存項目をもとに作成された20の質問群で「似ているから」というだけで定義されたものだったりします。
日本の学者が発表したメタ分析(発表されている論文を複数調査した結果のこと。言うなれば「論文の論文」)もあります。
「インターネット依存」自体がDSM-IVに掲載されているわけでもなく、「似ている」という理由で尺度が転用されているに過ぎない。2013年5月に改訂されたDSM-Vでも「インターネット依存」の掲載は見送られた。つまり、DQやIATの理論的根拠は不充分なのである。したがって、これらの尺度で「インターネット依存」を判断するためには、これにより「インターネット依存」を計測できるという理論的説明が求められると言えよう。
※…DQ(Diagnostic Questionnaire)IAT(Internet Addiction Test)DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
と、調査結果が不十分であるということが述べられています。
ネット依存のチェックシートでDSMとかIATって書いてあったら要注意ですね。いじょ。